盛土規制法を詳細に解説|令和6年(2024年)宅建改正情報

盛土規制法を詳細に解説

宅建の法改正で新設された「盛土規制法」を詳細に解説します

令和6年(2024年)宅建試験の重要改正として「盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)」の新設がありますね。

これまでの「宅地造成等規制法」を抜本的に改正して「盛土規制法」としたのです。

では、なぜ抜本的改正をしたのでしょうか?詳細に解説します。

2021年7月、静岡県熱海市で土石流災害

2021年7月、静岡県熱海市で土石流災害が発生し、28名もの人命が失われました。

多くの土砂が住宅地に襲いかかり、家々を破壊して押し流すニュース映像は記憶に新しいでしょう。
このときの土石流は、不適切な造成による盛土が大雨で崩落したために発生しました。
土地の開発を規制する法律には、宅地造成等規制法(以下、宅造法)のほか、森林法、農地法などがあります。各法律は、宅地の安全確保、森林機能の確保、農地の保全という具合に目的が異なります。しかし、盛土行為を一律に規制することはできておらず、各法律の網目を抜けた規制が不十分なエリアが存在していました。
宅造法では、知事等が規制区域を指定し、その規制区域内で宅地の造成工事を行う場合に許可を義務付けています。熱海市の土石流発生地点の盛土は宅地造成に該当せず、宅造法の規制の対象外でした。
そのため、土地の利用区分にかかわらず、人家に被害を及ぼす可能性がある危険な盛土を取り締まるルールが早急に求められました。

これを受けて、国は盛土・切土(以下、盛土等)による災害から国民を守るため、宅造法を抜本改正しました。

全国一律の基準で盛土等を規制する法律にし、法律名も「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称=盛土規制法)に改めることといたしました。

盛土等を規制する2つの区域

新たに制定された盛土規制法では、「スキマのない規制」を改正の第一テーマに掲げており、規制区域と、規制対象とする行為をともに拡大しています。

盛土規制法改正前後の規制区域の違い

改正前(宅地造成等規制法)の宅地造成工事規制区域
【規制対象】
宅地を造成するための盛土・切土
【区域指定のイメージ】
主に、丘陵地にある市街地(または今後、市街地になりうる土地)の区域を指定

盛土規制法による規制区域
【規制対象】
 •土地(森林・農地を含む)を造成するための盛土・切土
 •土捨て行為や一時的な堆積
【区域指定のイメージ】
改正前の宅地造成工事規制区域に加えて、土砂流出等により人家等被害を及ぼしうる、森林、農地、平野部の土地を広く指定

「宅地造成等工事規制区域(宅造区域)」と、「特定盛土等規制区域(特盛区域)」の2種類を指定する

知事等は、盛土などにより人家に被害を及ぼす可能性がある区域を規制区域として指定します。
この規制区域とは、以下の2種類があります。

  1. 宅地造成等工事規制区域(宅造区域
  2. 特定盛土等規制区域(特盛区域)

宅造区域には、改正前(宅造法)の「宅地造成工事規制区域」に加えて、危険な盛土等が発生しうる森林や農地、平地部の土地も含め、広く指定できるようになりました。

もう1つの特盛区域には、市街地や集落から離れていても地形などの条件から盛土等が崩落して流れ込んだ場合に、人家に被害を及ぼしうるエリアが指定されます。渓流の上流域のような斜面地です。

2つの規制区域の指定により、規制エリアは大きく拡大します。盛土規制法での規制区域のイメージは前ページの下記の図表1のようになります。

「宅地造成等工事規制区域(宅造区域)」と、「特定盛土等規制区域(特盛区域)」の2種類

土捨てや一時的堆積も規制対象に追加された

知事等の許可、標識の掲出

これまでの宅造法の規制対象は「宅地を造成するための盛土・切土」でしたが、規制される行為も増えます。

盛土規制法では用途を宅地造成に限定せず、「土地(森林・農地を含む)を造成するための盛土・切土」を規制対象にします。さらに、土地の形質の変更には該当しない「単なる土捨て行為や一時的な堆積」も規制対象に加えられました
そのため、宅造区域や特盛区域で規制対象の行為を行うためには、知事等の許可が必要になります。許可された盛土等は、所在地が公表され、盛土等を行う現地での標識掲出も義務付けられます。これは、無許可行為を摘発しやすくするためです。

許可が必要な行為

許可が必要かどうかの基準は、2つの規制区域で異なります。

宅造区域は、従来の宅造法の宅地造成工事規制区域の要件に「盛土で高さが2m超となるもの(崖を生じないもの)」が新たに加わりました(図表2の④)。

また、盛土規制法では盛土・切土だけでなく土石の堆積も規制対象になったことで、土石の堆積の基準について2つの要件も新たに加わっています(図表2の⑥、⑦)。

宅地造成工事規制 区域の要件

特盛区域の規制は図表3のとおりです。許可が必要な行為だけでなく、特盛区域には知事等への「届出」が必要な行為もあります。

特定盛土等規制区域における「許可」が必要な行為

2つの図を合わせるとこうなる

バラバラの図だとわかりづらいので、2つの図を1枚にまとめます。

2つの区域

許可や届出をまとめるとこうなる

2つの区域について、許可と届出をまとめました。かなり細かいので、ここまで細かく覚えることに価値はほぼないでしょう。

届出と許可

許可後の工事の適正性を確保

許可基準

盛土の安全性確保も盛土規制法が目指す重要なテーマです。盛土等を行うエリアの地形や地質に応じて、災害防止のために必要な安全基準(許可基準)を設定しています。

  • 土地の区画形質の変更(盛土、切土)に対しては、①擁壁の設置、②排水施設の設置、③盛土の締め固めなどの許可基準が設けられます。
  • 一時的な堆積に対しては、①地盤の勾配、②堆積の高さ、③境界柵までの空き地の確保などの許可基準が設けられます。

資力、信用等の審査と周辺住民への事前周知

許可にあたっては、工事主の資力や信用、工事施工者の能力も審査されます
土地所有者等(土地の所有者のほか、管理者、占有者)全員の同意と、説明会の開催など周辺住民への事前周知も許可要件になりました。

定期報告、中間検査、完了検査

さらに、工事のチェック体制も強化されました。
工事の施工状況を数カ月ごとに報告する「定期報告」、工事が完了してしまうと確認が困難になる工程(排水施設の設置など)の現地検査を行う「中間検査」が盛土規制法により新設されました。
定期報告制度と中間検査、工事完了時の「完了検査」の3点セットで許可後の工事の適正性を確保します。

条例による強化

許可基準や定期報告の頻度・内容、中間検査の対象項目などは、地域の実情に応じて条例で強化や上乗せができます

まとめるとこの表のようになる

届出、許可、中間検査、定期報告、完了検査という一連の流れを表にすると以下のようになります。

まとめ

許可申請してからの流れを少し細かく流れにすると以下のようになります。

責任の所在を明確化、罰則も厳格

責任の明確化

盛土等の責任の所在も明確化されます。土地所有者等は、盛土等が行われた土地に対して、常時安全な状態を維持する責務を負うことになります。土地が譲渡された場合でも、その時点での土地所有者等に安全状態維持の責務は発生します。災害防止のために必要な場合は、土地所有者等だけでなく、原因行為者(盛土等を行った造成主や工事施工者、過去の土地所有者も原因行為者として命令対象になり得ます)に対しても、知事等から是正措置命令が出されます。管理不全で安全性に問題が生じている場合、たとえば「擁壁の設置を」と土地所有者等や原因行為者は知事等から改善命令を受けることになります。

罰則

無許可や安全基準違反・命令違反の盛土等への罰則も厳しくなります。

盛土規制法では、無許可や命令違反の盛土等はいずれも「3年以下の懲役、1,000万円以下の罰金」へと厳格化されます。法人が違反に関与していた場合は、「最大3億円以下の罰金」が科されます。罰則の適用対象は造成主だけでなく、設計者、工事施工者、土地所有者等、原因行為者と幅広くなります。

これまでの宅造法と比べると厳罰化されています。宅造法では、無許可の宅地造成は「6カ月以下の懲役、30万円以下の罰金」、知事等からの命令違反については「1年以下の懲役、50万円以下の罰金」でした。条例による罰則も「懲役2年以下、罰金100万円以下」が上限とされていました。

宅地造成等規制法時代の規制区域は2年間有効

盛土規制法の前身が宅造法であることはここまで述べましたとおりです。
では、盛土規制法の施行後、すでに宅地造成等規制法に基づいて指定された宅地造成工事規制区域はどうなるのでしょうか?この場合、法施行日から最大2年間旧法の宅地造成工事規制区域が適用になる経過措置が設けられています。知事等は、盛土規制法に基づく新たな規制区域の指定を2年以内に実施する必要があるというわけです。

また、宅地造成等規制法の「造成宅地防災区域」は、盛土規制法にも引き継がれます
造成宅地防災区域とは、宅地造成に伴う災害で相当数の居住者などに危害が生じる恐れが大きい一団の造成宅地のことで、知事等が指定するものです。

今年4月12日時点で指定されているのは北海道と熊本県の数自治体のみですが、こちらも最大2年間旧法が適用され、必要であれば2年以内に知事等が新法に基づいて指定し直すことになります。

宅建業者の業務との関連性

これまで宅地造成等規制法は、宅建業者の業務と関連の深い法律の1つでした。

たとえば、宅建業者が自ら宅地造成工事を行ってその宅地を分譲するケースや、他社が造成した宅地の売買に仲介で携わるケースです。
どちらのケースでも、宅建業者が宅地造成工事の完了前にその宅地の広告をしようとする場合、宅造法の規制区域では工事の許可が下りた後でなければ広告ができませんでした。

宅建業法上の重要事項説明をするか

宅地造成等規制法の規制は重要事項説明の対象でもありました。宅地造成等規制法の規制区域の制限の概要や、造成宅地防災区域内かどうかは、重要事項説明書に記載し説明しなければなりませんでしたが、盛土規制法になってもこれらは変わりません

盛土規制法の施行日には、関連する宅建業法の政省令も改正され、宅地造成等規制法に代わって、盛土規制法が広告前に許可等が必要な法令の1つに規定されます。

盛土規制法の規制区域の制限の内容(宅造区域の許可、特盛区域の届出・許可など)と、造成宅地防災区域かどうかも重要事項説明の対象に引き続き位置付けられます。盛土規制法施行後であっても、知事等が新たな規制区域の指定をしていない場合は、旧法の規制区域について説明します。

特定盛土等規制区域

この「特定盛土等規制区域」は、宅地造成等工事規制区域」以外の土地について都道府県知事が指定することができる区域となっています。

この特定盛土等規制区域については、「宅地造成等工事規制区域」同様に一定規模以上の盛土等(政令で規定)については、工事許可制度、中間検査、完了検査、定期報告制度などが規定されています。

まとめ

以上で盛土規制法の解説は終わりです。

他にも、詳細解説をしています。

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情報元:https://www.mlit.go.jp/toshi/web/content/001603830.pdf

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