
表見代理とは、「表から見て代理人」と読めます。無権代理人となにが違うの?と思いますよね。このページで詳しく解説します。
表見代理とは
無権代理人に代理権が存在するかのような外観があると認められる場合に、その外観を信頼した相手方を保護するため、有権代理と同様の法律上の効果を認める制度です。
原則として「本人の帰責性」、「第三者の信頼」、「虚偽の外観」が揃えば(この3つをあわせて「権利外観法理」という)本人を犠牲にしても相手方を保護することになります。
つまり、表見代理が成立すると契約は有効になるので、相手方はちゃんと保護されるべき人である必要があるため善意無過失でなければなりません。
表見代理には次の3パターンがあります。

上記のような場合は全て表見代理が成立します。つまり契約は有効です。
表見代理を主張できる者はだれか?
(Q.)表見代理が成立した場合、表見代理を主張できる者は誰か?
(A.)表見代理は相手方Cが主張することができます。
「本人A」や「表見代理人B」は主張できませんのでご注意ください。
本人Aは追認をすれば良いだけなのでわざわざ表見代理を主張する必要はありません。
表見代理人Bは「お前(表見代理人B)が面倒なことしたんだから、お前が主張するな」という話だからです。
表見代理の規定を組み合わせることができるか?
表見代理の3種類を全ての組み合わせで重畳適用することができます。
(ex.)Aは自らの所有する甲土地の賃貸に関する代理権をBに授与したが、のちにその代理権授与行為を撤回した。その後、BがAの代理人と称してCに甲土地を売却した。
この例では厳密に言うと、「権限外の行為の表見代理」にも、「代理権消滅後の表見代理」にも該当しません。よって、表見代理が成立しないのでは?とも思えます。
しかし、表見代理のパターンを組み合わせて使うことによって、表見代理を認めたのでCは保護されます。
夫婦間の日常家事債務に関する代理権(761条)
夫婦間という話ですから、例えば『旦那が頼んだデリバリーのピザを奥さんが玄関で受け取りお金を払う』というような場合に、旦那から奥さんにわざわざ代理権を付与しておかなければならないか?ということです。
この場合、夫婦の一方は、個別に代理権の授権がなくとも、日常家事に関する事項について、他の一方を代理して法律行為をすることができます。
夫婦間の日常の債務についてまで代理権が必要とするのは現実的じゃないですよね。
代理の論点はおしまい
代理の全論点がこれにて終了です。
次は、制限行為能力者へと移ります。
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司法書士の実務をしながら大学講師をしている法律家。
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宅建士、司法書士、行政書士、貸金業務取扱主任者など法律系資格を保有。
法律未学習・高卒・フリーターから宅建試験をきっかけに法律の道を進む。