民法③-1 心裡留保とは|権利関係 【司法書士監修!宅建部の練習】
この記事で分かること
・心裡留保の初歩からハイレベルまで
心裡留保とは、嘘や冗談のことです。もしも、心裡留保で契約をしたら以下のようになります。
- 善意無過失→有効
- 悪意・善意有過失→無効
結論が分かれていますが、これはどういうことでしょうか?詳しく解説していきます。
1.心裡留保とは
心裡留保とは、心の裡(うら)を留保することです。難しく感じますが簡単です。ようは嘘や冗談で契約をしたときのことです。
2.心裡留保の効果
(問題) A所有の土地につき、AとBとの間で売買契約を締結し、Bが当該土地につき第三者との間で売買契約を締結していない場合、Aの売渡し申込みの意思は真意ではなく、BもAの意思が真意ではないことを知っていた場合、AとBとの意思は合致しているので、売買契約は有効であるか? (答え) 有効です。以下の原則通りです。 |
心裡留保により契約をした場合、以下のように原則として有効になります。
原則:相手方が善意無過失なら有効
(ex.)AがBに対して「PCを100円で売るよ」と嘘を言って契約をした場合、Bが善意無過失なら本当に100円で売ってもらえます。
相手方BはAの嘘を知らないし、知らないことに過失もありません。
嘘をついた張本人Aを保護するよりも、Bを保護するべきですよね。Bからすると、契約が有効に成立した方が嬉しいので、契約を有効にすることがBの保護になります。
例外:相手方が悪意または善意有過失なら無効
(ex.)AがBに対して「車を50円で売るよ」と嘘を言って契約をした場合、Bが善意有過失なら、その契約は無効です。嘘や冗談の契約だと知っていた人や、落ち度がある人まで保護する必要はないわけです。
無効にしないと、一切嘘も冗談も言えない世界になってしまいます。
嘘をついていることを知っていたり、有過失の者にまで有効にすると、
3.善意の第三者に対抗できるか?
善意の第三者とは、心裡留保の契約があったことを知らずに、利害関係に入った者です。そう言われても分かりづらいので、解説していきます。
典型例は、以下のようなAとB以外に、善意の第三者Cが登場した場合です。
この場合、上記の例外の無効になるはずであった場合でも、その無効を善意の第三者に対抗できません。(93条2項)
「その無効は善意の第三者に対抗できない」と言われてもよく分かりませんよね。以下の図を見て下さい。
①AB間で土地の売買契約をしました。しかし、その契約はAの心裡留保によるものでした。BはAの心裡留保について悪意です。
今までの知識だけならば、Bが悪意なので「契約は無効」で話は終わるはずですが、まだ続きがあります。
②BがCに当該土地を売るための売買契約をしました。CはAB間で心裡留保による契約あったことについては善意です。
③AはCに、「AB間の契約は心裡留保だったんだ!AB間の契約は無効だから、BC間も無効のはずだ!土地を返せ!」と言えるでしょうか?
さて、本来であればAは「この契約は無効だ!返せ!」と言えるはずです。
しかし、AB間の心裡留保について、善意のCに対して、Aは「この契約は無効だ!」と言えません。
Cは善意なのでCを保護してあげないとかわいそうだからです。
よって、この土地はCのものになります。
心裡留保おわり
心裡留保については以上で終わりです。
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司法書士の実務をしながら大学講師をしている法律家。
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宅建士、司法書士、行政書士、貸金業務取扱主任者など法律系資格を保有。
法律未学習・高卒・フリーターから宅建試験をきっかけに法律の道を進む。