【大量解説】民法⑥-1 取得時効|権利関係 【宅建部の練習】

取得時効

民法⑥-1 取得時効|権利関係 【司法書士監修】

この記事で分かること
・取得時効の初歩からハイレベルまで

時効は「時間が経過によって権利を取得したり失わせる制度」です。

時間の経過だけで権利が無くなるなんてひどい!という話ですが、時効には以下の趣旨があるからです。

①法律的にどうかということではなく事実上の持ち主を尊重しよう

②何年も放っておくような権利の上に眠る人の権利は守ってやる必要はない

(1)取得時効

取得時効とは(162条)

取得時効とは…他人の物または財産権を一定期間継続して占有または準占有する者に、その権利を与える制度です。

例えば、ある土地を所有者が10年も20年も放置している間に、他人がその土地を使用している状態をイメージしてください。もう事実上は他人のものなんだから法律上もその他人のものにしてあげようということです。

時効取得

Bの土地をAが所有の意思を持って平穏・公然に占有すると一定の条件でAが時効により取得できます。

なお、土地の一部でも時効取得できます。

取得時効の要件

所有の意思を持って占有していること(自主占有)。

 借りてる、預かってる等ではダメということです。

②平穏・公然に占有されていること。

占有開始時から善意無過失なら10年間、悪意または善意有過失なら20年間自主占有していること。

所有権以外でも地上権や賃借権、質権等も時効取得できます。(163条)

なお、農地を時効取得する際に農地法の許可等は必要はありません。

取得時効のポイント

 上記③の「占有開始時から」ということは?

取得時効のポイント

自主占有開始時に善意無過失なら途中で悪意になったとしても10年で時効取得できます。あくまで「占有開始時」が基準だからです。

 ②間接占有でも時効取得できるか

間接占有とは他人を介して占有している場合です。

(ex.)自分の所有物として他人に貸している場合

この場合、時効取得できます。他人を介して間接的に占有しているからです。

反対に、自らが占有していることを直接占有といいます。もちろん直接占有でも時効取得できます。

 ③占有は譲渡、相続などで承継できるか?(187条1項)

例えば親が占有をしていたが、相続により親の権利を取得した場合です。下記の2つのどちらをしても構いません。

 ⅰ.自分の占有だけを主張する

 ⅱ.占有を承継して前に占有していた人の占有と併せて主張する

ただし、ⅱの前の人の承継も併せて主張する場合、前の人の占有状態(悪意など)も承継します(良いとこ取りはできないということです)。といっても分かりづらいので以下で説明しましょう。

占有の承継

BはAの占有から数えると8年分を承継した上で占有できるわけですが、Aの悪意も承継します。つまり、Bは残り12年間占有しなければ時効取得できません。

しかし、Bは自分だけの分を主張することができます。そうするとBは善意無過失なので10年間の占有で時効取得できます。

このようにAを承継しても占有期間が長くなる場合があります。

④自己の物でも時効取得できるか

自己の物でも時効取得できます。登記をしていないため所有権取得の立証が困難な時や、第三者に対抗できない場合に自己物を時効取得する実益があるからです。

(ex.)裁判で「買った時の契約書はないが20年間占有しているから時効によって取得した」と主張する

⑤前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有はその間継続していたものと推定されるか?

推定されます。10年や20年もの間、占有していたことを証明するのは困難です。また、10年20年分の監視カメラなどを見ているほど裁判官は暇ではないからです。

時効取得は原始取得か?承継取得か?

占有開始時から時効取得者の物となり、時効取得したものは原始取得(他の権利が全部消えて新品の状態ということ)になります。他人の抵当権等は消滅するということです。

次は消滅時効へ

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