行為能力を完全に有しない者を制限行為能力者といいます。(13条1項10号)
どんな者が制限行為能力者に当たるのでしょうか?詳しく解説します。
行為能力とは
目次
行為能力とは…単独で有効に法律行為ができる能力のこと
一般的に大人(18歳以上の男女)は、「(完全)行為能力者」とも言われ、自分ひとりで自由に契約を締結できます。判断能力が十分にあるからです。
しかし、反対に、判断能力が低いものがいます。それを民法では「制限行為能力者」として、これらの者を保護しようとしています。
制限行為能力者の種類
制限行為能力者は以下の4種類があります。大きく分けると「未成年者」と「未成年者以外」に分かれます。未成年者は年齢的に、未成年者以外は判断能力的に制限行為能力者とされています。
制限行為能力者 | |||
未成年者 (18歳未満) | 成年被後見人 (判断能力がない) | 被保佐人 (判断能力がほぼない) | 被補助人 (判断能力は結構ある) |
制限行為能力者の前提知識
制限行為能力者とは…単独では完全に有効な法律行為をすることができない者のこと
(ex.)未成年者がした法律行為が確定的に有効となるためには、原則として法定代理人の同意が必要となります。もしも未成年者が法定代理人の同意を得ずに法律行為を単独で行った場合、未成年者本人やその法定代理人が取り消すことができます。
【制限行為能力者のテクニック】
制限行為能力者を保護するために「保護者の同意がないと取り消せる」という規定があるんだ!だから、多少のことには目をつぶって制限行為能力者を保護する方向にいくぞ!
本試験問題で知らない知識が出たら制限行為能力者側を保護する方向で答えるようにしたら正解の可能性が高くなるということだな!
未成年者
未成年者とは
未成年者とは…満18歳未満の男女のこと
2022年4月1日から満20歳から満18歳になりました。
婚姻は男女ともに18歳からすることができます。
成年になる年齢と婚姻できる年齢が一致するため「成年擬制」の制度はなくなったぞ!未成年者が結婚したということがあり得ないからな!
2.法定代理人
法定代理人とはいわば保護者のような存在です。未成年者の代わりに色々なことをすることができます。法定代理人は以下の者がなります。
①親権者
②親権者がいなければ未成年後見人(法人でも複数人でもOKです)
これらの者の権限は以下の4つです。
- 同意権
- 取消権
- 代理権
- 追認権
※同意権とは、法定代理人が未成年者に「契約して来ていいよ」と同意する権利です。
※取消権とは、未成年者がしてきた契約を取り消す権利です。
※代理権とは、法定代理人が未成年者を代理する権利です。
※追認権とは、未成年者がしてきた法律行為を後から認める権利です。
取消権者
未成年者が単独でした契約は以下の者が取り消すことができます。
①本人
②法定代理人
未成年者本人も取り消せることに注意しておきましょう。
未成年者が単独でできる行為はあるか?
未成年者が完全な法律行為をするには原則として法定代理人の同意が必要です。
しかし、未成年者が法定代理人の同意を得なくても完全な法律行為をすることができるものとして以下の①~③があります。
①単に権利を得または義務を免れる行為
プレゼント(負担のない贈与)をもらったり、借金をゼロ(債務の免除)にしてもらうようなことは未成年者が単独ですることができます。
反対に、「債務の承認」や「弁済の受領」、「遺贈の放棄」は未成年者に不利になるので法定代理人の同意が必要になります。
②処分を許された財産の処分(おこづかい等)、目的を定めて処分を許した財産(学費等)
③一種又は数種の営業を許された場合でその営業に関する行為
・定食屋を自営業する場合などです。定食屋の経営→◯
・ただし包括的な許可はダメです。 営業行為の全て→×
なお、営業の一部に限定しての許可はダメです。相手方に不足の損害を与えるからです。
こんなひっかけに気をつけよう
少し話を変えますが、乳児でも不動産を所有することができるでしょうか?
人は出生してからみんな権利能力を持っているので乳児でも不動産を持つことができます。
不動産を持てるかどうかは権利能力の問題だからです。
制限行為能力者のように行為能力が制限されていても不動産を所有することはできます。行為能力と権利能力は分けて考えましょう。
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司法書士の実務をしながら大学講師をしている法律家。
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宅建士、司法書士、行政書士、貸金業務取扱主任者など法律系資格を保有。
法律未学習・高卒・フリーターから宅建試験をきっかけに法律の道を進む。