【大量解説】民法④-2 自己契約・双方代理・利益相反、代理権の濫用とは|権利関係 【宅建部の練習】

自己契約・双方代理・利益相反、代理権の濫用とは

【大量解説】民法④-2 自己契約・双方代理・利益相反、代理権の濫用とは|権利関係 【宅建部の練習】

自己契約・双方代理・利益相反は、それぞれ別の制度です。しかし、一緒くたに勉強することが多いのです。なぜでしょうか?それは、3つとも効果が同じく「無効」だからです。これはどういうことでしょうか?前半で解説します。

代理権の濫用は、その名の通り、代理人が代理権を濫用(悪用)した場合です。代理権の濫用をした場合、どうなるのでしょうか?後半で解説しましょう。

この記事で分かること
・自己契約・双方代理・利益相反の初歩からハイレベルまで
・代理権の濫用の初歩からハイレベルまで

自己契約・双方代理・利益相反とは

. 自己契約とは

代理人が自分自身と契約する(自ら買主になる)ことです。ここではBが自己契約をしている代理人に当たります。以下の図を見て下さい。

このような自己契約を認めると、代理人が自分勝手に値段を決めることができるためダメです。

. 双方代理とは

当事者両方の代理人となることです。ここではBが双方代理人です。以下の図を見て下さい。

双方代理を認めると、当事者の利益を損なう恐れがあるのでこれもダメです。

3. 利益相反とは

相手方CはB本人ではないので自己契約ではありません。しかし、Bの妻が相手方Cです。

さすがに、これではCに有利な契約を結ぶかもしれませんのでダメです(BとCの財布は一緒でしょう)。

自己契約・双方代理・利益相反をしたらその効果はどうなるか?

原則

すべて原則として禁止です。

違反した場合は無権代理となります(つまり、無効です)。

例外

例外的に、自己契約・双方代理・利益相反ができる場合が、以下の3つです。

  1. あらかじめ許諾している場合(双方代理は両当事者ともに)
  2. 単なる債務の履行をする場合
  3. 追認した場合
部長
部長

【例外②の単なる債務の履行をする場合】
単なる債務の履行をする場合とは、どういうことだろうか?具体例で考えてみよう!
 
(ex.)所有権移転登記の代理を双方から依頼された場合
         A  →  B
          5000万円      
5000万円で土地を売買するという契約が当事者間で成立していた場合、5000万円で土地を売買するという当事者間の利害が一致しているな!
あとは移転登記を申請するだけだ。
つまり、双方から所有権移転登記の委任を受けた代理人は当事者の利益を左右することはないんだ
よって、双方から登記の依頼された代理人でも双方代理には当たらないんだ。

もう少し深掘りしてみよう。なぜ、登記は双方代理にならないのかというと、登記が単なる債務の履行にすぎないからだ。
単なる債務の履行とは、ようは雑用のイメージ(世の司法書士に怒られそうだが…)だな。
雑用まで禁止する必要がないので、双方代理OKとされているんだ。司法書士にはヒドイ話だ。

※相手方に代理人を選任させる場合はどうか?
(Q.)
当事者の一方が代理人の選任を相手方に委任することはできるか?
(ex.)和解の当事者の一方が代理人の選任を相手方に委任する

(A.)これはできません。このような場合は無効になります。自己契約、双方代理そのものの話ではないですが、実質的に同様だからです。

次に、代理権の濫用という論点に移ります。

(3)代理権の濫用(107条)

代理権の濫用とは…代理権を与えられた代理⼈が代理権を濫⽤してしまった場合、本⼈は保護されるでしょうか。代理人が、自己または第三者の利益を図る目的でした代理行為は、相手方がその目的を知り、または知ることができたときは、無権代理行為とみなされます。

(設問)
AはBにCと交渉する代理権を与えた。しかしBは契約締結後、契約金を着服して姿を消した。この場合、AとCの契約は有効か?なお、CはBの真意を知っていた。

(答え)
無効です。以下の解説の通りです。

Bの主観的な問題は別にして、客観的に見れば代理権の範囲で契約締結をしています。

しかし、相手方CがBの真意を知りor知ることができたときまで契約を有効にするのはAがかわいそうです。

そこで、このような場合はAを保護します。

つまり、原則は有効ですが相手方がBの真意について悪意または善意有過失の場合は、無権代理の効果と同じく無効です。

部長
部長

この結論は「心裡留保」と全く同じだな!
なぜ、心裡留保と同じなのかというと、2020年の民法改正前は、心裡留保の規定を類推適用していたからだ!
代理権の濫用のシチュエーションは、心裡留保と酷似しているため、類推適用されていたんだな!

代理権の消滅事由、復代理、代理行為の瑕疵

次は代理権の消滅事由、復代理、代理行為の瑕疵へと進みます。

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