民法⑤-4 制限行為能力者の共通事項と相手方の保護|権利関係 【司法書士監修】
目次
この記事で分かること
・制限行為能力者の共通事項の初歩からハイレベルまで
・制限行為能力者の相手方の保護の初歩からハイレベルまで
制限行為能力者にするための申立権者はだれか?
制限行為能力者になることを家庭裁判所に申し立てる申立権者は、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官等です。(7、11条、15条1項)
もしも本人以外から申立てがあった場合、本人からすると「俺はまだボケてねえ!被補助人にするんじゃねえ!」と言いたいかもしれません。
そこで、本人以外の申立て(ex配偶者からの申立て)による場合には以下の通り被補助人の場合だけ、本人の同意が必要になります。被補助人はかなりの判断能力があるので、勝手に被補助人にされては本人からすると迷惑な場合もあるからです。
反対に、被補助人以外は判断能力が低いため本人の同意は不要です。
詐術を用いた場合はどうなるか?
(ex.)未成年者が成年者だと嘘ついて契約した
このような場合に、相手方がその詐術を信じてしまったのであれば、嘘をついた制限行為能力者を保護するより相手方を保護するほうが良いですよね。
民法もそう考えているため、詐術を信じた相手方を保護します。
なお、制限行為能力者でないと偽る場合だけでなく、保護者の同意を得ていると信じさせるために詐術を用いた場合であっても、この詐術に当たります。
法定追認をした場合
保護者が履行、請求、譲渡など一定の契約を認めるに他ならない行為をすれば、実際に追認の意思表示をしていなくても取消しはできなくなります。
(ex.)未成年者が同意無しに車を売ったあとに親がその売買代金を要求した
法定追認に限らず普通の追認であっても一度追認したらもう取消すことはできません。
取消権の消滅時効
以下の期間が経過したら取消権が時効消滅します。つまり、取り消すことができなくなってしまいます。
①追認できるようになってから5年経過
②行為の時から20年経過
保護者が同意をする相手
法定代理人の同意は制限行為能力者本人にすることはもちろん、相手方にしてもかまいません。
相手方の保護
1.催告権
催告権とは…制限行為能力者が単独でした行為は原則として取り消すことができるが、一方的に取り消しを決められると相手方との公平性が無く、相手方からするとたまったものではありません。(20条1項)
そこで相手方は一ヶ月以上の期間を定めて契約を認めるのか取り消すのか催告をすることができます。
2. 催告をした場合の結果
3.考え方のポイント
①未成年者、成年被後見人について
例えば、未成年者や成年被後見人が契約をして、その未成年者や成年被後見人に催告をしたとしても、そもそもその催告を正確に判断する能力がないので意味がありません(未成年者や成年被後見人は、ほぼ判断能力がないと民法は考えています)。よって、上記表の催告をする相手に未成年者や成年被後見人自身は入っていません。
そこで、相手方は法定代理人に催告をすることになります。法定代理人には取消権があるので嫌なら取り消せば良いでしょう。もしも取り消さない(返事をしない)のであれば「追認するってことだな」と思われても仕方がないので、追認になります。
②被保佐人、被補助人について
被保佐人・被補助人との契約後、保佐人・補助人に催告をして返事が無い場合「追認になる」ということは未成年者などと同じ理由です(嫌なら取り消せということですね)。
しかし、被保佐人・被補助人はある程度のことを自分でできる判断能力があるので、相手方は被保佐人・被補助人と契約したら「保佐人・補助人に同意をもらってきて(追認してもらってきて)」と被保佐人・被補助人自身に催告することができます。
この催告に対して返事が無い場合、契約を取り消したものとみなすのは表の通りです。その理由としては、被保佐人・被補助人に対して催告をしたのに返事がないということは「保佐人・補助人に伝えていないんだな」ということになり契約は取り消しになります。
後見監督人
少し細かい規定ですが、家庭裁判所は必要があると認めるときは後見監督人等を選任することができます。
後見監督人(保佐監督人、補助監督人)
┃
成年後見人(保佐人、補助人)
┃
成年被後見人(被保佐人、被補助人)
「成年後見人などが悪さをするんじゃないか?」というときにお目付け役として選任するわけです。実際に成年後見人が成年被後見人の財産を横領したといったニュースを目にすることがあります。とんでもないことですが…。
※後見監督人の同意がなければ取り消せないのか?
例えば、後見監督人がいる場合であっても、後見監督人の同意を得ていなくても成年被後見人の法律行為を取り消すことができます。あくまで取り消しは成年後見人の判断によります。
制限行為能力者はこれで終了へ
次は、時効へと移ります。
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司法書士の実務をしながら大学講師をしている法律家。
個別指導はこちらから受けられます。
宅建士、司法書士、行政書士、貸金業務取扱主任者など法律系資格を保有。
法律未学習・高卒・フリーターから宅建試験をきっかけに法律の道を進む。